男がつくる酒の肴

なにが楽しいって、料理をつくっているときほど幸せなときはない。そして、出来上がった料理を気の合った連中と楽しくおしゃべりをしながら食べる。これが最高だね! ぽくは週に一度、日曜日にはたいてい台所に立ちます。
 男の料理はとにかくひたすらうまいものへの挑戦なのです。手間ひまを惜しまず、丹念に季節の新鮮な材料を探し、つくり方をよくよく研究し、自分流にアレンジをしてみる。それがおいしく仕上がればいうことなし。
 プロの料理人じゃないのだから、見た目を美しくなんてことは考えません。ましてや、多くの主婦が考えそうな「できるだけ手間をかけず、それでいていかにもかけたように見せる」などというわけのわからない工夫をしようなどとはユメユメ思わない。安い材料を使って、必要とあれば十分に手間をかけ、その結果見た目にはちっとも手間がかかったように見えなくても、うまければそれでいいんですよ。
 ぼくは昼といわず夜といわず、食べるときは必ずお酒を飲むのが長年の習慣です。もっとも、台所に立ちながら、すでにグラスは片手に持っているわけだけれど。最近は気の合った仲間と心おきなく飲める店が少なくなってきたせいか、うちで飲むことが多くなりましたね。そんなとき酒の肴をつくるのはもちろんぼく。わが家の台所は、料理をしながらハッチごしにお客とおしゃべりができる、という気のきいたつくりだから、ぽくが台所に入っていても客を退屈させなくてすむのがありがたい。
 といっても、ウイスキーやブランデーなどいわゆる蒸留酒を飲むときは肴はいっさいつくりませんよ。もともと純粋に酔うのが目的のお酒を、何かを食べながら飲むというのは邪道だと思ってますからね。
 食事をしながら飲むのはあくまでも醸造酒。日本酒やワイン、老酒などです。これらは食事をおいしく食べるためのお酒であり、肴は欠かせません。食事が主になるか酒が主になるかによって料理の内容も当然違ってくるけれど、酒が主役で肴が従のときは手軽に肩のこらないものをつくります。どこでも手に入る安い材料で手間をかけずにつくるにかぎります。友だちが突然来ても、15分と待たせずに肴がテーブルに並びます。おいしい料理が素早く出てくるというのもごちそうのうちですからね。