VAN 雅楼

1966年(昭和41年)謙介は山中湖に別荘を建てる。設計は、長男、祥介の友人であり、この年の2年前に祥介の抜擢で帝人メンズショップの内装デザインを手掛けた宮脇 檀(みやわき・まゆみ 1936~1998)。後に住宅から美術館まで、多くの建築物を手掛けた奇才である。謙介はこの別荘を若き日の宮脇に依頼する際、「面白い家の案ができるまで持ってこなくていいよ」と告げたという。謙介のモノ作りに対する本質が窺える言葉だ。施主に良き理解者と山中湖を望む斜面という建築家の意欲をかき立てる立地を得て宮脇は奮闘した。1000枚のスケッチを描いた。何度も敷地周辺を歩き回った。1年半をかけて設計図が完成した。施工は宮大工も努めた田中文男。集成材の曲線が印象的な鯨のような形をした「もうびぃでぃっく」=VAN雅楼の誕生である。この別荘は謙介家族や友人だけでなく、VANの社員にも解放された。